今年は川辺の桜も例年より早く咲き始め、土筆やスミレ等春の草花も一斉に咲きだしました。音信川の鯉たちも春の訪れを喜んでいるかのように、気持ちよさ そうに泳いでおります。 お客様は、川辺を散策されたり、近くの大寧寺までぶらぶらされながら、のどかな春を楽しんでおられるようです。 先日市内にある香月泰男美術館(当館より車で20分ほど)へ行ってまいりました。長門市は童謡詩人金子みすゞさんの故郷でもございますが、画家の香月泰 男さんの故郷でもあります。 香月画伯の絵を見るためだけにわざわざ遠くから来られる方も少なくありません。 画伯は戦後日本美術史を代表する洋画家で、第二次世界大戦後のシベリア抑留の体験をもとにした、57点の油彩からなるシベリアシリーズが代表作です。 このたび没後40周年を記念して県立美術館収蔵の数々の絵も展示されてます。 旧ソ連軍の捕虜となって、極寒のシベリアで苛酷な強制労働と飢餓に苦しみ、次々と仲間が亡くなっていった、その心の傷がこれらの絵を描かせたのだと思うとずっしりと重みが伝わってきます。

香月画伯のイメージはこのシベリアシリーズの印象が強いのですが、故郷 長門の三隅の地をこよなく愛し、ふるさとの自然や愛する家族を題材とした絵画や廃材(ブリキや木片、ジュースの缶など)を利用して作ったおもちゃも人気です。 特に画伯手作りのおもちゃは現代の機械化されたおもちゃとは異なる、ほのぼのとして夢のある作品で、絵画の世界とはまた違った楽しい一面も感じられ、お子様方にもぜひ見ていただきたい作品です。 香月画伯の当時のアトリエもそのまま再現されて残されており、可愛らしいおもちゃもそのまま飾られていて、窓越しにをノックすると「やあ!いらっしゃい!」と今にも画伯が出てこられそうな思いがいたします。 さらにもう一つご覧いただきたいのが、画伯が2年の間に、戦地より家族へ宛てた300通余りの絵手紙です。小さな「はがき」に託してわずかな時間だけでも絵を描くことにより勉強を続けるという画家としてのひたむきな情熱と「はがき」を家族へ送ることで自分の安否を知らせるという家族への愛情がひしひしと伝わってくる本当温かい絵手紙です。 私も絵が上手に描けたら、「こんな絵手紙が書けたら!」と思いました。 長門や萩への観光の途中にぜひお寄りになっては如何でしょうか。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。